2025年5月、日産自動車が発表した2024年度の連結決算は、最終損益が6700億円超の赤字という衝撃的な内容でした。これは、同社の歴史の中でも最大級の損失であり、経営再建を迫られる形となっています。
本記事では、赤字の背景、再建計画の詳細、そして国内外への影響について詳しく解説します。
日産が赤字に陥った背景
日産の2024年度の業績がここまで悪化した要因として、以下のような複合的な問題が挙げられます。
- 世界的なEV競争の激化:テスラや中国のBYDなど、世界中でEV(電気自動車)市場が急拡大する中、日産は初期のリーフ以降、次のヒットEVを出せず、競争力を失っていました。
- 為替変動と原材料高騰:円安が進行する一方、リチウムなどのバッテリー素材価格が上昇し、利益構造を圧迫しました。
- 国内販売の低迷:軽自動車やコンパクトカーの販売が他社と比較して伸び悩み、特に若年層のクルマ離れが影響を与えました。
経営再建に向けた大規模な構造改革
日産は今回の赤字を受け、「選択と集中」の方針で抜本的な構造改革を進めています。
1. 人員削減:全世界で2万人
国内外合わせて約2万人の人員削減を実施予定。特に海外の販売拠点や開発部門が中心となりますが、国内工場にも影響が及ぶと見られています。
2. 国内外工場の一部閉鎖
北米・アジアを中心に、生産効率の低い工場の閉鎖を実施。また、国内でも1~2拠点の統廃合が検討されているとの報道があります。
3. 車種の見直しとEVへの集中
利益率の低いモデルを廃止し、EVおよびハイブリッドに注力。2027年までに、グローバルで10車種以上のEVを新規投入する計画です。
社会・地域経済への影響
- 地方工場閉鎖の波紋:工場閉鎖や人員削減は、地域経済やサプライチェーンにも大きな影響を及ぼします。特に、雇用に依存していた地方都市では経済の停滞が懸念されます。
- 取引先中小企業への連鎖的影響:日産と取引している中小企業も、契約打ち切りや減産の影響を受ける可能性があります。部品メーカーや物流企業は特に警戒が必要です。
再建のカギは「アライアンス再構築」と「ブランド価値回復」
ルノー・三菱とのアライアンス戦略の見直しも今後の焦点です。各社の役割分担を明確にし、技術や資源を有効に活用できる体制を再構築する必要があります。
また、「日産」というブランドの信頼を回復するためには、消費者に響くEV製品の開発と安全・品質へのこだわりが求められます。
投資家・業界関係者へのメッセージ
今回の赤字決算は確かに厳しい結果ですが、企業再建のタイミングとしては明確な転換点とも言えます。日産が大胆な改革に乗り出した今こそ、
- 長期的視点での投資判断
- 地方経済と雇用への支援策検討
- 自動車産業全体の構造変化への対応
といった冷静かつ実効的なアプローチが必要です。
まとめ|日産再建は日本製造業の試金石となるか
日産の危機は、一企業だけの問題にとどまりません。国内外でのEVシフト、雇用問題、サプライチェーンの再構築など、日本の製造業全体にとっても極めて示唆に富んだ出来事です。
「守り」から「攻め」へ。
日産が本気で変わるかどうかは、数年以内に明らかになります。
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